会長挨拶
年頭のご挨拶
新年あけましておめでとうございます。旧年中は本会の運営にご支援とご協力を賜り、心より御礼申し上げます。本年も変わらぬご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
先ずは、この度、非常に感染力が強いと言われております新型コロナウィルス・オミクロン株の感染拡大傾向を鑑み、安全を最優先して、急遽、賀詞交歓会の開催を中止することといたしました。関係各位には直前の連絡となり、ご迷惑をお掛けし大変申し訳ありませんでした。ご理解ほどよろしくお願い申し上げます。
さて、昨年を振り返りますと、世界的にワクチン接種などの感染対策と経済活動の両立が進み、世界経済は回復基調に推移しましたが、コロナ禍による物流の混乱や生産の停滞による供給制約と、原材料、資源価格や輸送費の高騰、更にはここに来て変異種オミクロン株の感染拡大で経済回復は鈍化しています。
日本経済については年初より度重なる緊急事態宣言で経済は一進一退でしたが、10月の緊急事態宣言解除後は感染者数が減り全体経済は回復に向かいました。しかしながら、供給制約、並びに企業物価の高騰で、足元の製造業の景況感は横ばいとなっています。日本の鋳鍛鋼業界においても生産量が前年同期比で鋳鋼が1割増、鍛鋼が2割増と回復傾向にありますが、依然としてコロナ禍前の水準には届いておりません。
こうしたなか2022年度の新春を迎え、今年の前半には経済がコロナ禍前の水準に回復することを期待したいところですが、オミクロン株によるコロナ第6波の懸念や米国はじめ各国利上げによる金融市場の混乱、債務問題による中国経済の減速など先行きの見通しは依然としてすっきりとしない状況です。鋳鍛鋼各社は引き続き市場の動向を見ながら“入りを量りて出ずるを制す”を基本に、コスト圧縮と柔軟な生産体制による守りの経営でこの難局を乗り越えることになります。
さて、当会では継続的に取り組んできた、業界発信力、人材育成、技術革新、環境・安全活動、並びに市場動向調査に加えて、カーボンニュートラル、デジタルトランスフォーメーション(DX)、および持続可能な開発目標(SDGs)の実現を新たな課題と捉えています。これらは国が骨太方針2021で重点分野と位置付けておりますが、個社で対応できることには限界があります。鋳鍛鋼業界としてあるべき姿を模索すると共に、ビジネスの可能性を研究することを今年度の活動方針に掲げております。
エネルギーを大量に使用する当業界においてCNは大きな挑戦であります。国による技術開発の支援やカーボンプライシングなどの制度設計の議論が展開されています。これらの動向を注視し、CN実現へのアプローチと課題を整理することが重要です。当会組織を横断的に活用して対応を検討して参ります。
特に大量の化石燃料を使用する工業炉のCNは大きな課題であり、産学官が連携して総力を発揮しなければ解決できません。アンモニアや水素などのカーボンフリー燃料を使った燃焼技術が必要となりますが、難易度の高い技術開発であり、かつ多大な費用が掛かります。国の支援により速やかに技術開発を推進することが必要です。
また、製造業のDXへの取り組みが広がりを見せています。企業の枠を超えてそれぞれが持つ情報を積極的に共有し、企業間のオープンイノベーションが当たり前に行われるようになりました。今後、顧客や調達先との取引をエコシステムに変革する取り組みが本格化して行くと思われます。鋳鍛鋼業界が抱える様々な問題に目を向け、業界をより合理的、効率的にしていかなければなりません。問題解決に資する情報のあり方が重要なテーマの一つです。これまでコロナ禍で2年間対面開催が控えられていた会長副会長会議を今春再開しこれらの課題を議論して参ります。
これまで、日本の鋳鍛鋼メーカは高い技術力で製品を差別化・高付加価値化して、グローバル競争に打ち勝ってきました。一方、現代は様々なリスクにより事業環境が激しく変化するとともに、このコロナ危機により社会・経済構造の変化が加速しています。これからは、企業変革力の強化が重要な課題となって来ます。日本の鋳鍛鋼業界にとって大変難しい課題でありますが、情報を共有し、共通の問題を議論しながらこの企業変革力の強化に取り組んで参ります。引き続き、会員の皆様をはじめ関係各位のご理解とご支援を賜りますようお願いいたします。結びになりますが、一日も早いコロナ禍の終息を願いつつ、本年が日本の鋳鍛鋼業界にとってコロナ禍の反動で新たな成長の礎となり、会員並びに賛助会員の皆様が益々ご活躍、ご発展されますことを祈念しまして、年頭のご挨拶とさせて頂きます。
一般社団法人 日本鋳鍛鋼会会長 岩本 隆志(株式会社日本製鋼所 取締役常務執行役員)
過去の会長挨拶
令和6年(2024年) | 年頭挨拶(1月11日新年会にて) | 小野田 謙一 |
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令和5年(2023年) | 就任挨拶 | |
年頭挨拶 | 太田 大介 | |
令和4年(2022年) | 就任挨拶「力強い健全な業界へ」 | |
年頭挨拶 | 岩本 隆志 | |
令和3年(2021年) | 就任挨拶 | |
年頭挨拶 | 森 啓之 | |
令和2年(2020年) | 年頭挨拶(賀詞交歓会挨拶から) | |
平成31年/令和元年(2019年) | 就任挨拶(鋳鍛鋼業界の発信力向上に向けて) | |
年頭所感(賀詞交歓会挨拶から) | 天野 肇 | |
平成30年(2018年) | 年頭所感(賀詞交歓会挨拶から) | |
平成29年(2017年) | 就任挨拶(創立70周年記念祝賀会にて) | |
年頭所感 | 仲田 摩智 | |
平成28年(2016年) | 年頭所感 |