鋳鍛鋼業について
鋳鍛鋼とは？
鉄は、鉄鉱石から製品になるまでに多くの工程をたどります。鉄鉱石から取り出される最初の製品は“銑鉄”と呼ばれ、この銑鉄を精錬することで強度の強い“鋼（はがね）”となります。さらに、鋼の塊を用途に適したさまざまな形に成形していきます。
成形法は、ロールで延ばす“圧延”、型で鋳固める“鋳造”、プレスで圧力を加えて成形する“鍛造”の３つに大別されます。圧延は板状や棒状など単純形状や大ロットの生産に適しており、複雑形状、大型、小ロットなどの製品は鋳造・鍛造法で製造されます。
「鋳鍛鋼」とは、この鋳造・鍛造でつくられる製品のことで、個々には「鋳鋼」、「鍛鋼」、まとめて「鋳鍛鋼」と呼んでいます。
鋳鍛鋼品はどのように造られるか？
a) 鋳鋼品の製造プロセスと技術
私たちの生活の中で目にする代表的な鋳造品は銅製の置物で、動物・植物など様々な形状の製品があります。鋳鋼品は形だけではなく、強度も得られるように工夫されたもので、鉄合金を使用した複雑な形状と優れた機械的性質を同時に併せ持っていることが大きな特徴です。鋳鋼品は溶けた鋼を鋳型に流し込み、冷却凝固させて、でき上がります。古くから行われているのは砂型鋳造法で、木型の模型（木型）を砂に植え込んで形をとります。木型には上型、下型、中子があり、例えば水道の蛇口のような、形状が複雑で中空の製品でもつくることができます。木型のほかに、発泡スチロールの模型を使い、鋳造完了後は模型を完全消失させるフルモールド法や、蝋を模型に使うロストワックス法などがあります。ロストワックスは精密鋳造に最適な鋳造法として活用されています。
b) 鍛鋼品の製造プロセスと技術
昔から私たちの身近にある鍛鋼品の代表は刃物です。熱い鋼をハンマーで叩いて鍛える鍛冶屋のイメージですが、大型製品を製造する近代工業としての鍛造では、圧力が１千トン、あるいは１万トン規模の水圧や油圧プレスを使用します。鍛造には型を使う“型鍛造”と型を使わない“自由鍛造”とがあります。型鍛造は、静水圧を利用し、型に材料を充満させます。型を利用しますが鍛造なので素材の強度が高くなります。自由鍛造では最終の正味形状（ニアネットシェイプ）を目指して鋼塊を成形します。鍛造後は熱処理を加えて更に質を高めます。現代の鍛造法では、「鍛造作業・機械加工・熱処理」がセットで行われるため、きわめて高度な品質を得ることができます。
たとえば、発電用部品の一つである「ローター軸」は自由鍛造品の代表的な製品です。また、鋼材圧延用の「バックアップロール」は、高硬度と高い疲労強度を併せ持った材料でつくられた２００トン以上もある大型の鍛鋼品で、鍛造プロセスならではの製品といえます。
材質は鋼に限らず、ニッケル系合金、チタン、マグネシウム合金、等々、広い範囲にわたります。
鋳鍛鋼品は何に使われるか？
| 需要部門 | 鋳鋼製品例 | 鍛鋼製品例 |
|---|---|---|
| 電力 | タービンケーシング、ポンプランナー、ポンプケーシング、ガイドベーン、タービンフランシスランナー、ノズル、チューブサポート、チュウブシート、ランナー、ガイドベーン、カップリング、バルブ類 | タービンロータ（高圧、中圧、低圧）、発電機軸、リテイナーリング、ピニオン、タービンブレード、ベアリングフランジ、ケーシングボルト、大径管、ヨーク材、原子力圧力容器用ベッセルフランジ、グーラントチャンネルヘッド、接手類 |
| 石油・化学 | チューブシート、チューブサポートブラケット類、バルブ類、ローラー、タイヤー、タイヤモールド、ギヤーボス、マントルコーンケープ、歯板 | 反応塔（高圧反応塔）、熱交換器、分離器、圧縮機部品（ボルト、ナット、バルブ本体）、鍛造パイプ、接手、チューブプレート |
| 鉄鋼 | ロールハウジング、ロールチョック、ラジアントチューブ、テーブル、ベッド、鋼滓鍋、羽口金物、大ベル、トラニオン、エンドフレーム、ノズル、アンビル、トラニオンソケット、グレートバー | 圧延機用ロール、ローラ、カップリング、スピンドル、カムワルツ、マンドレル高炉部品、転炉部品、運搬用車両部品 |
| 船舶 | シャフトブラケット、ピストンクラウン、タービンケーシング、ポンプケーシング、スタンフレーム、ラダーフレーム、ラダーキャリアー、プロペラボス、シャフトブラケット、錨、錨鎖、バルブ類 | クランク軸、クランクアーム、接合棒、クランクジャーナル、ピストンロッド、カム＆カム軸、タイロッド、クロスヘッド、ピストンヘッド、タービンロータ、タービンブレード、ギヤーホイルリム、ピニオン、スラスト軸、中間軸、推進軸、発電機軸、ラダーストック |
| 鉄道 | 連結器、台車枠（貨車）、車軸受、ハウジング、モターフレーム、軸箱体、レールクロッシング | 車軸、車輪、ブレーキディスク、ギヤー、アイドラー、ピニオン、駆動軸、制御軸 |
| 自動車 | アクスルハウジング、リアーアクスル、ハウジングケース、ギヤーケース、デフケース、ハブ類、ブラケット類、トラニオン、クロスヘッド、 | クランク軸、コネクティングロッド、カムシャフト、リヤーアクスルシャフト、ディファレンシャルギヤー、ピニオン、ユニバーサルジョイント、フロントアクスル、ステアリングナックル、ステアリングアーム |
| 土木・建設 | 土木工事用パイル、建築用コラム、バケットツース、ベベルギヤー、コーンケープ、支承（橋梁沓）、建機用スプロケット、タンブラー他 | 浚渫船用カッターシャフト、歯車、堀削機用アクスル、シャックル、トラクター用主軸、フック |
| 鉱業 | クラッシャー本体、ジョープレート、回転子、軸受け、索受ローラー、衝撃刃、コーンケープ、歯板、インペラー、打撃板、ローラータイヤ、グレートバー、ライナー、粉砕輪、固定盤、溶解鍋 | 破砕機・摩砕機・選別機用回転軸、歯車 |