会長挨拶

年頭所感(賀詞交歓会挨拶から)

一般社団法人 日本鋳鍛鋼会会長
天野 肇

新年あけましておめでとうございます。旧年中は本会の運営に皆様のご支援とご協力を賜り、誠にありがとうございました。

さて、昨年を振り返ってみますと国内外に大きな変化や転換が起こった年でした。海外においては、米トランプ大統領の就任に大きく国際情勢が揺れましたが、予想に反して米国経済が好転したこと、ヨーロッパでのテロの散発、北朝鮮によるミサイル発射など、地球規模での危機の高まりを感じずにはいられない一年となりました。また、パリ協定で枠組みが決められた低炭素社会への取り組みがスタートしました。

国内においては、自動車・産業機械が活況となり、日系自動車メーカーが中国での販売量が過去最大となったなど報じられております。政府施策が奏功し、広範囲にて景気回復がなされた一方、人手不足の問題が現れており、少子高齢化の社会構造の変化が顕著になりつつあります。当会の会長・副会長会議でも採用難や外国人労働者受け入れなどが議題となり、会員各社の共通の課題であると実感しました。

また、企業統治(ガバナンス)、法令順守(コンプライアンス)に対する課題が浮き彫りとなり、日本のものづくりへの信頼性を取り戻す必要性を感じる1年でもありました。

前述の通り、低炭素化社会や少子高齢化による社会構造の変化も考え方によっては、ものづくりを行っている産業界において大きな前進要素としてとらえることができると考えております。低炭素化社会を実現するために省エネ技術を一段と向上させることによって、国際競争力を優位に立たせることが可能になるチャンスがあると考えられるからであります。少子高齢化による労働人口減少に立ち向かうための、いわゆる働き方改革においても単なる労働時間短縮ではなく、IT活用や多様な人材の育成・起用によるワークシェアリングと置き換えると当業界における転機と言えます。

本年も当会では以下の4項目を引き続き重点課題として積極的に活動を推進して参ります。①国際競争力強化のための技術革新、②若手・中堅の人材育成、③タイムリーな市場の動向調査、④生産活動の基盤である安全衛生・環境エネルギー活動の4点です。昨年開催された国際鍛造会議(IFM2017)では多くの会員会社より論文発表がありました。内容も他国と比較してレベルの高い報告で若手・中堅層の人材育成が順調に進んでいる感想を持ちました。また、電力多消費型産業である鋳鍛鋼業では政府が主導しているFIT制度における賦課金減免率を維持するために、省エネ努力として原単位の改善及び消費量削減に取り組んでいますが、更なる技術力上昇を図って、国際競争力向上を目指していく必要があります。安全衛生については、一昨年から発足した労働安全・衛生委員会では各社における現場での課題などを話し合う中で、災害を起こしにくくする改善事例などを紹介しており、アイデアに富む事例も紹介いただき、参加者から好評を得ております。当会活動へのご理解を賜り、積極的なご参加をお願いいたします。

今年の鋳鍛鋼業界における課題ですが、原材料・副資材価格の高騰への対応であります。中国事情に起因する鉄スクラップや電極、耐火物の高騰が発生しており、経営に影響を及ぼしています。今後もこれらの影響からは目が離せず、当会でも情報発信をしていきたいと考えております。

さて本年は戌年でございます。「戌」の字は、もともとは陰暦の九月の意味で、刃物「戈」で刈り取った収穫物を、横「一」文字で結束するという、この「戈」と「一」の2文字を合体したものだそうです。鋳鍛鋼業界においては、今年は収穫の実を刈り取って繁栄の1年となることをご祈念申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。

一般社団法人 日本鋳鍛鋼会会長 天野 肇(大同特殊鋼株式会社 常務執行役員)

過去の会長挨拶

令和6年(2024年) 年頭挨拶(1月11日新年会にて) 小野田 謙一
令和5年(2023年) 就任挨拶
年頭挨拶 太田 大介
令和4年(2022年) 就任挨拶「力強い健全な業界へ」
年頭挨拶 岩本 隆志
令和3年(2021年) 就任挨拶
年頭挨拶 森 啓之
令和2年(2020年) 年頭挨拶(賀詞交歓会挨拶から)
平成31年/令和元年(2019年) 就任挨拶(鋳鍛鋼業界の発信力向上に向けて)
年頭所感(賀詞交歓会挨拶から) 天野 肇
平成30年(2018年) 年頭所感(賀詞交歓会挨拶から)
平成29年(2017年) 就任挨拶(創立70周年記念祝賀会にて)
年頭所感 仲田 摩智
平成28年(2016年) 年頭所感